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サン・セバスチャン
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つぶやき大王日記
美食の町として売り出し中のスペインバスク地方のサン・セバスチャンを訪れた。
いやしくも食品に携わる者として恥ずかしいことは食べることに無頓着であることである。
思い出すこと40年前スキー場の民宿で10名ほどで夕食を食べていた時のこと、予期せぬことにぶりの刺身がでてきてみんな大喜びでおいしくいただいたのだが醤油ではなくソースにワサビを入れて食べていたことが後になってから発覚し「そういえばなんかソースのにおいがしたな」とみんなで言い合ったが誰も気づくことなくおいしく食事を終えたのである。その時以来私は人間の味覚を信用していなくて、そもそも味覚というものは5歳までに決定してしまいそれ以降はどんなにおいしいものを食べても5歳までに食べた自分の記憶にある味と照らし合わせておいしいかおいしくないかを判断しているだけで、今まで食べたことのないものを食べた場合記憶に残っている味と比べて~みたいでおいしいとか~みたいで嫌いとか判断するだけで90%は先入観で判断するだけである(醤油と思い込めばソースでしかもワサビを入れて刺身が食べれるように)というのが私の味覚に対する持論なのである。
その私があろうことか美食の町において三ツ星レストランに挑戦してみたのだ!
店の名前はMartin Berasategui(マーチン・ベラサテギと発音するらしい)サン・セバスチャンには4件の三ツ星レストランがありその中の一つである。
音楽も流れていない明るくてモダンな雰囲気も、そして明るくて少し茶目っ気のあるウエイターもとても居心地のいい店なのだがやはり度肝を抜かれたのがその料理だ。
例えばこの料理、スプーンに入っている丸いのがアンチョビとトウガラシとオリーブの実のヒルダで赤いカニがタピオカ、グラスに入っているのがマグロのタルタルステーキといった具合で見ただけではいったい何が使われているのかさっぱりわからず何の先入観もなく食べれてこれがまたとてもおいしいのだ。
つまりなんだかわからないが今まで食べたことのない食感で今まで経験したことにない味なのにとてもおいしいという未体験ゾーンなのだ。
このような感じの料理が少しずつ15皿ほど出されて大満足なのだが問題はその時間、もともとこの国の夕食の時間は日本より遅くだいたい20時ころから始まるのだがこの料理のコースがすべて終わるのにかかる時間は4時間なので終了時には日付が変わっていることになる。
後半は眠い目をこすりながら意識朦朧で食べていたが今思うともったいないことをしたと少し後悔している。
せっかく遠くまで行ったのだから思い切っていってみてよかったと思っているしまだまだ知らないことっていっぱいあることを改めて思い知らされた旅であった。